私の先祖である渋沢栄一が、「偉き人」と「完きの人」という言葉を残しています。「偉き人」というのは、どこか飛び抜けたところがある人で、それで短所をカバーできるひとをいいます。一方、「完きの人」というのは常識の人のことで、“知・情・意”のバランスがとれている人だというのです。常識があるかないか、ではなくて、この3つがバランスよく育くまれていることが肝要で、もしどれか一つが秀でているのであれば、他の2つもバランスを保つために高めなければならないということになります。
そして、社会が必要としている人間というのは、「完きの人」だと、理想論として語っています。こうした言葉を手がかりに考えてみると、日本人の特徴は、「偉き人」よりは、“知・情・意”のバランスが取れた「完きの人」かもしれません。“知・情・意”のバランスというのは普遍的な考え方で、経営学者のジム・コリンズ氏が「ビジョナリーカンパニー2〜飛躍の法則」という自著の中で、「Great Company」の経営者に共通する点として、まずNo.1になろうという意志があるか(=意)、何に情熱を持つか(=情)、そして何が経済的なエンジンになっているか(=知)、という3つをバランスよく兼ね備えているといっています。コリンズ氏がいう「Great」には、「偉き」というより「完き」の要素が含まれているようですね。
有名なフランク・ボーンの「オズの魔法使い」でも、主人公のドロシーと共に行動する3人の仲間が登場しますが、かかしは「知」、ブリキのロボットが「情」、ライオンは「意」を象徴しており、それぞれがその欠損を取り戻していくという物語でした。このように「知・情・意」のバランスというのは普遍的な考えとなっています。
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