これまで携わってきたヘッジファンドやオルタナティブ投資というものは、一言でいえば、運用の世界でいかに職人の目利きを表現するかということでした。しかし、日本の投資信託は、販売会社が売る商品を供給する工場であって、職人の目利きより、売れるものを出せばよいという傾向があります。ファンドというのは、投資家から預かったお金をいかに効率的・合理的に運用してお返しするかというところに目的があり、それゆえ「より高い価格で、より短い期間で」がキーになります。
その方が資本の効率性が高まり、次の投資案件に再投資できるからです。こうした視点はもちろん重要です。ただ、そこには企業が事業を発展させていくために要する時間軸という視点が抜け落ちています。企業の株価、つまり縦の軸では、ファンドと経営者と目的が合致するものの、時間という横の軸で考えると目的が合わない、というのが、ファンド資本主義の限界であると思います。経営者サイドがファンドに対して、いいところで買って高いところで売り抜けるハゲタカファンドか、グリーンメーラーというイメージを持っているのもそのためです。
私自身は、長い時間軸で動かせるお金、例えば長期的な視点を持てる個人の投資家のお金を集めれば、今のファンド資本主義の限界を乗り越えられるかもしれない、そう考えています。この発想の一つのきっかけになったのが、「さわかみファンド」の澤上篤人さんとの出会いです。自分が独立したタイミングで、当時、さわかみファンドは300億円規模で飛躍の前夜でした。澤上さんは自らの熱い想いと行動力で、16億円からピークには2,700億円というお金を、販売会社を通さずに個人から集めています。投資信託でこういう「オルタナティブ」ができるというのは、衝撃的でした。澤上さんとの交流、そしてご奨励を通じて、今までの自分の経験を基に、自分自身が取り掛かりたい次のステージが見えてきました。
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