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Front Interview
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Vol.030 シブサワ・アンド・カンパニー株式会社代表取締役 渋澤健第3話 家宝
コラム(3) パーソナル・データ(3)
ソフトパワーで人を引き寄せる
 顧客に対して“想い”を正確に伝える・届けるという意味では、日本というのは、まだまだそのニーズに応えきれていない部分があるような気がします。こうしたことは海外に限らず、国内においてもいろいろな場面で起こっていて、直販の意味が問い直されてしかるべきではないでしょうか。顧客に“想い”を届けるということにおいて、本当に顧客のニーズに応えられているのか、という気がしてなりません。
 いいものを持っているのに、それをアピールできていません。それは短所であり長所でもあるのですが、ある意味、ハードパワー的に押すのではなくて、ソフトパワーでいいものを作って人を引き寄せるというのは、一つの方法論だと思います。
 いいものを作れば、わかってくれるだろうという押しつけがましさのないところは日本文化が長けている部分である反面、きちんと説明しない、伝えられていないということで、大きな誤解やビジネスチャンスを逃しているという面もあるのではないでしょうか。

時間を超えて対話する
 渋沢栄一には、現物としては何も残してもらえませんでしたが、いろいろな言葉を残してくれたので、それは私自身にとって家宝となっています。講演録なども含めて伝記資料がたくさんあって、言葉として残っています。そういう言葉と向き合いながら、自分の想像力と解釈で、曾祖父さんは当時、どう思っていたのだろうかと、もちろん極めて自分のバイアスのかかった解釈しかできませんが、時代を超えて知らない人と対話できるわけです。そういう言葉が残っているのはいいことだなと思います。
 4世代前というと16人がいて、その人たちのお陰で現在の自分があります。たまたまそのひとりが渋沢栄一だったから、その存在を知り、言葉も残っているわけですが、それ以外の16人について、栄一の妻、千代、以外まったく知りません。名前さえ知りません。でも、その人たちの出会いがなければ、私は存在しなかったわけですから、極めて大切な人たちです。そういう意味でも、その時々の考え・言葉を次世代に残すということは重要なことだと思います。
 そもそもなぜ、渋沢栄一について調べようと思ったかというと、渋沢家には昔、家訓というのがあって、株や政治をやってはいけないというのがあったというんですね。それを聞いた時に、本当なのだろうかと思って調べました。すると、実際に家訓はありましたが、正確には「投機の業務、または卑しい職務に就くべからず」という言葉でした。それがきっかけで、他にも何かあるのかもしれないと思って調べていくと、今の言葉で言えば、「守りに入るな、リスクを取れ」など、いろいろ残していたことを知ったのでした。

(8月27日更新 第4話「コモンズ」へつづく)



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