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Vol.031 株式会社ガバナンスビジョンズ代表取締役社長 小林久仁子第2話 疑問
コラム(2) パーソナル・データ(2)
子どもは社会が育てる
 極端にいえば、金融界に関わらず、日本の企業には「女性はコピー取りとお茶汲み。あとはいわれたことをやればいい」という風潮がまだ残っているような気がします。男女雇用機会均等法の施行によって、男女格差がなくなったとはいえ、その実情にはいささか疑問があります。よく一般企業に勤めていた女性社員が結婚して子どもを出産すると、それを境にして退職する人がけっこういます。もちろん、子育てに専念するからという理由でやめる人もいると思いますが、そうではないケースもけっこうあるのです。
 たとえば、ある会社に20人くらいのチームがあって、そこで既婚の女性が働いていたとします。産休を取って子どもを出産し、その後も仕事を続けていたところ、子どもがたびたび熱を出して早退するとか、保育園に迎えに行くから残業はできないとか、子どもを抱えていると、その人の仕事のウエイトが減ってくるわけです。そうなると残りの人たちが男女を問わずに「だれだれさんが子どもの都合で先に帰るから、私たちの負担が大きくなる」となるのです。
 職場の人間が「また、あの人のせいで私たちは損をする」のように、自分のことしか考えないような態度では困るのです。だれの子どもであっても、チーム20人の子どもだと思えば腹も立たないわけです。職場の仲間がサポートしていけば、実際に子育てをしている社員の方も気分的にずいぶんと楽になると思います。子どもを産んだら退職せざるをえないような会社ばかりでは、子どもは増えません。自分の子ども、他人の子どもというより、次世代の子どもを社会が育てるという考え方を持っていかないと、日本の少子化は解消できないと思います。

バブル社会への懐疑
 バブル景気のころは銀行も生保も業界全体が浮かれて、おかしい状態になっていました。自分たちがとてつもなく偉くなったように勘違いした方たちが大勢いて、銀行は資金不足の人々に融資して、それで利息をいただいて成り立つことを生業にしていたはずなのに、相続税対策をやりましょう、地上げ対策をやりましょうとか、この時期は変な方向へベクトルが行ってしまったわけです。
 私の実家にも銀行の方が来て、資金はいくらでも提供するから家を建て直してマンション経営をしたらどうかとか、とにかくいっていることが土地はどんどん上がり続けるという、激しい思い込みの中で話が進むのですから信じ難いことでした。まさにバブルに踊らされていたような感じを受けました。証券会社の若い社員が一晩で20万円くらいを平気で使う、OLたちは週末に「ジュリアナ東京」で踊り狂うという時代でしたからね。
 私も年に4回もボーナスをもらったりしていましたが、さすがにこの好景気が未来永劫に続くとは思っていませんでした。むしろこの状態は異常だと思い、このまま金融界にいたら自分がおかしくなってしまうと真剣に悩みました。住専とかにもファンドをはめて、それでボーナスをもらっていることにも罪悪感がありましたから。それで単純に証券ファンドを扱う仕事がいやになってしまったのです。それで心と体をリフレッシュさせるために、金融の世界とはまったく違う仕事をしようと決意したのです。

(9月17日更新 第3話「ガバナンス」へつづく)



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