昔の銀行と企業は、会社の経営状態よりも、一緒にゴルフに行くとか、酒席をともにするとか、お付き合いの長さや深さが重要でした。企業の収支・財務状況だけではなく、経営者がいかにメインバンクの支店長と懇意であるかという、双方の親密度が融資するときに関係したわけです。ところが、今から10年ほど前に不良債権問題が起こると、銀行が融資したお金が本当に戻ってくるのかという企業への審査が厳しくなりました。
そして、長期で融資を受ける場合は、従来のように年1回の決算書の提出だけではなく、2年後、3年後に会社はどういう経営をして、どんな財務状況になっているのかという「事業計画」が問われるようになりました。今後3年間、こういう戦略やビジネスモデルで業界の競争に打ち勝ち、どのように融資を受けた資金を活用して利益を出し、そして返済していくのかという経営のシナリオやストーリーを提出しないと、銀行は融資しないようになったのです。
私は24年間、興銀の行員として法人営業の仕事に携わってきましたので、企業に対する長期の融資に関する案件は得意分野でした。融資時の企業審査などをしていましたので、企業経営者側の立場になって、銀行から融資をしてもらうノウハウ、銀行とのお付き合いの仕方などをコンサルティングする「財務アドバイザー」として仕事ができるのではないかと考えました。それで自宅の居間にパソコンを置いて、単身で起業したわけです。
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