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Vol.033 リッキービジネスソリューション株式会社 代表取締役 澁谷耕一第4話 架橋
コラム(4) パーソナル・データ(4)
リスクを重ねて
 興銀時代に2回コンサルティング部門に在籍し、事業戦略のコンサルタントをしていました。私が経営者の方にアドバイスをすると、「澁谷さん、それはあなたが興銀にいるから言えることであって、実際の企業経営はそんなに簡単ではありません」と言われました。そう言われても、私は経営者の経験がないので反論ができません。「そうですか」と言うしかないのです。
 コンサルタントは「こうすると会社は成長します」、「経営課題の解決ができます」と指導しますが、実際に自分でその会社を経営するわけではありません。自分が会社を一度経営してみないと、経営者に対して良きアドバイスはできないだろうと思いました。自分の会社を経営して初めて、48歳からでも起業できます、成長できます、社員を雇用できますと言えるわけです。
 今でも興銀時代の先輩方から、事業はいろいろと手を広げないほうがいいと忠告されます。失敗するとコンサルタントとしての道が閉ざされるというのです。ありがたい言葉だと思いながらも、そういわれると僕はやりたくなってしまう性格なのです。もちろん、致命的な失敗はしてはいけませんが。プラスの今泉嘉久会長は、アスクルという社内ベンチャーを東証一部の企業にした方ですが、「たくさん失敗するほど成功する」と言っています。リスクを重ねて、チャレンジしていく姿勢も企業経営には必要ではないでしょうか。

ベンチャーが育たない
 米国は大企業がいっぱいというイメージがありますが、実際は小さい会社の多い中小企業国家なのです。日本の方が大企業国家といえます。ですから、日本には大きな会社に就職しなければいけない、大企業でなければ信用できないみたいな風潮がありますが、こういった考え方は打破したいと思っています。
 日本でも、米国のようにインディペンデントに対する評価がもっと高まってもいいはずです。勇気がある、自分の力で生きていくというチャレンジ精神への評価です。日本の企業は起業家をサポートするケースがあまりありませんが、米国では大企業が支援してくれることがよく見られます。この間、米国議会の関係者の方々と話す機会があったのですが、なぜ日本ではベンチャービジネスが育たないのかという話題になったときに、日本では、ベンチャー企業というと実績に乏しいことから、なかなか信用を得ることができないというような話をしました。
 また、日本では職業的保障や安定度が重視されていると思います。
 職業としての地位が保障されている人が社会的に重要視されるのです。医者、弁護士、大学教授、公務員、大会社の社員などが評価されます。ベンチャー企業経営は不安定そのものです。不安定な中で、失敗を繰り返しながら、成功をつかむところにベンチャー精神があります。依然として現在の日本には、失敗は許されない、実績のないものは受け入れられないという空気が漂っています。ベンチャーが育つ上には、こういう日本人の考え方や企業の体質の改善も必要でしょう。



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