起業家・ベンチャーキャピタル・投資家を繋ぐコミュニティ・マガジン

Front Interview
第1話 第2話
第3話 第4話
Vol.033 リッキービジネスソリューション株式会社 代表取締役 澁谷耕一第2話 使命
コラム(2) パーソナル・データ(2)
メディア戦略という手法
 各銀行でセミナーを開催しながら試行錯誤しているときに、社団法人金融財政事情研究会から、経営者が銀行に対して思っている本音について、週刊「金融財政事情」に記事を執筆しないかという依頼がありました。セミナーで話す内容が面白いからということでした。15回シリーズで記事を書かせていただいた後で、今度は1冊の本にまとめてみないかという話が持ち上がりまして、2年前に『経営者の信頼を勝ち得るために』という本を出版しました。幸いなことに銀行関係者の方々から好評をいただき、銀行の支店からセミナーの依頼が来る、銀行からの紹介で企業とのビジネスチャンスが生まれるという好循環が生まれました。
 メディアを通して銀行の信用を得るもう1つの手法として考えたのが、当社で配信している金融機関役員向けの総合ポータルサイト「銀行員.COM(ドットコム)」の開設です。このサイトでは銀行トップや企業経営者のインタビュー記事を中心に、金融界の情報を配信しています。インタビュー取材は私が担当していますが、通常は銀行の頭取にはなかなかお会いすることができませんが、メディアでの取材となれば受けてくれるのです。
 このインターネット・コンテンツと連動させた隔月刊情報誌が「金融機関.YOM(ドットヨム)」です。この情報誌はフリーペーパーとして、全国の銀行、信用金庫、信用組合すべてに発送しています。その効果も年々出てきたようです。昨年6月からは各種雑誌・新聞記事をスクラッピングした「経営予測エイジ」という35年間続いている会員制月刊誌を当社から発行することになりました。

あせらず、あきらめず
 現在もいろいろなセミナーを開催していますが、そこで私がよくお話しするのは「できないことはない」ということです。起業当初は経営者と何度面談しても仕事に結びつけることができませんでした。そのときは経済的にも本当に苦しい時期でしたが、自分たちは銀行と企業経営者を仲介し、お金の流れを良くして、日本の経済を活性化させるのだという使命感がありました。社会の役に立つという使命感は大事です。使命感があると大抵の苦労は乗り越えられるものです。勇気が出るのです。
 たとえば、「銀行員.COM」や「金融機関.YOM」で銀行トップに取材を依頼します。周囲の人間は「そんな媒体に銀行の頭取クラスがインタビューに応じるわけがない」と思うわけですが、きちんと依頼すれば、実際には登場してくださるのです。昨年は当時の金融庁長官であった五味廣文氏の取材もできました。長官の部屋にマリリン・モンローの写真が飾ってあったので、「マリリン・モンローのファンですか」と尋ねると、笑顔で「そうです。マリリン・モンローと長嶋茂雄が好きな人に悪い人はいないよ」とおっしゃったことが印象的でした。そのときの取材がご縁で、今年の4月からは当社の顧問に就任していただきました。金融担当大臣の方にも取材を申し込むと快く応じてくださり、これまでに与謝野馨氏、山本有二氏、渡辺喜美氏に登場いただけました。現職の中川昭一財務・金融担当大臣は興銀時代の同期ですから、ぜひ取材をしたいと思っています。
 何事もあきらめないという信念は大切ですが、度が過ぎてはいけません。本の出版依頼があったときに思ったことですが、あまり売り込まないのも一つの戦術ではないかと。これは、起業後しばらくしてからわかったことでもあるのですが、ビジネスをするときに売り込もうとすると案外と商品は売れないものです。起業当初、銀行にうかがって銀行員向けの営業セミナーをやらせてくださいと売り込んでも実現しませんでした。それよりは自分で努力して実力をつければ、見る人は見てくれます。誰かがその人の努力を必ず認めてくれるものです。


(11月19日更新 第3話「縁」へつづく)



HC Asset Management Co.,Ltd