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Vol.025 さわかみ投信株式会社 代表取締役 澤上篤人第1話 立志

身体から絞り出す
 これまで出会った人たくさんの人たちから、実にさまざまな影響を受けています。といっても、こちらが一方的に素敵だなと思ったり、勝手に感動したりするだけのことですが、それらが自分にとっての肥やしになっていくのです。
 私は与えられるものに興味がありません。自分が探し求めていて、「あ、ここにいた、素敵だな」と発見できることに感動を覚えるのです。自分のことをやたらに喋る人はいっぱいいますし、もちろん、好きに喋ればいいと思いますが、そういう人たちは少しも素敵に見えません。しばらく経ったら、前と全然違うことを言っていたり、やっていたりします。一所懸命という言葉がありますが、軸がぶれない、想いが一つという人は、身体から絞り出るような言葉というものを持っています。
 私自身も、自分をよく見せるということには興味がありません。よく見せたところで何になるのかと思います。何にもならないし、何も残らない。相手にどう見えるかなどということは、それぞれ受け取る人の勝手ですからね。よく見せようというのは、単なる自己満足にすぎません。中には、自分の銅像を作ったりする人もいますね。私の場合、想いや夢というものが常に自分の気持ちの中にあるので、表層的なものはどうでもいいという気がするのです。

サラリーマン家庭のためのファンド
 会社がスタートしてから11年半。実際にファンドを立ち上げてからは8年以上が経ちました。「さわかみファンド」をサラリーマン家庭の財産づくりのために、としたのは、現在の日本の経済・社会をつくり、支えているのが、サラリーマンなど、一般家庭の人たちだからです。経済や社会というものは、普通の人たちが生きている営みによって成り立っています。別にお金持ちだけで社会が成り立っているわけではないし、いいとこ取りの抜け目のない人たちが、世の中を動かしているわけでもありません。
 そういう人たちは放っておいても好きにやっていく。どうせ私がファンドを手がけるならば、一所懸命に生きている人たち、働いている人たちに対して何かしたいし、できるなら、そういう人たちのお手伝いをしたい、そういう気持ちから始めたのです。世の中の多くの人というのは、日々、真面目に働き、実直に生きているわけです。そういう人たちの営みが社会を構成しているのです。それは世の中を見渡したら、誰でもわかることです。
 先ほどお話しした「恒産なくして恒心なし」の考え方が広まっていけば、その先に社会正義とか、公共心への意識も高められるでしょう。そんな社会をみなで築いていけたらいいよね、と考えます。ただし、それは、頭で考えることではなく、心で感じ取ることです。みんな、頭でばかり考えるようになっているのですよ。私は、いつも心で感じ、心で考えるのです。ちょっと変な言い方になるかもしれませんが、頭で考えていると、ついつい理屈ばかりこねて、大切なものを見失ってしまうことがあるのです。それでは意味がありません。



(3月12日更新 第2話「前を向く」へつづく)




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