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Vol.025 さわかみ投信株式会社 代表取締役 澤上篤人第3話 ビレッジ

社会を作っていく
 社会とは、我々一人ひとりの生活が集まってできあがっているものです。だから、どのような社会に「なっていくか」ではなく、どのように「作っていくか」なのです。そこには、はっきりとした意思が表れてきます。今までの日本は、与えられてばかりでしたが、もうそういう時代ではありません。
 もっと自分で考えて、自分から主体的に動いていくべきです。できあがった業を守るのではなくて、その先にある新しい業を創り出し、経済が動いていく中で、社会がどのように変わり、どう動いていくかをしっかり描いていく必要があるのです。
 それと同時に、常に先をイメージしながら、自分たち自身がどんどん先へ進んでいくことです。私自身が一つのモデルとして見られているかもしれませんが、まったく違う方向に進んでもらってもいいですし、私が背中を見せているようで、実は追い越されていたというような結果になっても、そこが人生の面白いところだと思うのです。

腹を括って買う
 安く買って高く売る、それが運用です。上がりそうなものを手当たり次第に買って利益を得ても、儲けは儲けでしかありません。ただ私たちは、「儲け方」というのをすごく大事にしています。「儲け」ではなくて、「儲け方」です。要するに、世の中が不況の時、市場が暴落している時、みんなが逃げたがる、あるいはみんなが安全という蚊帳の中に隠れたがる時に、私たちは断固、お金を投入します。経済の逆張りです。「私たちが買います。どうぞ売ってください」といって引き受けます。そういう形で、腹を括って買うのです。
 本当に世の中にとって大事なもの、こういう会社に頑張ってほしい、こういう会社が売られるのはけしからん、という会社の株だけを買うのです。「潰してなるものか」の感情移入をしながら腹を括り、経済の低迷期にお金を放り込んでいきます。不況というのは、お金がなくなるから不況なのです。だから、どんどんお金を放り込んでやればいいのです。そうすれば、経済が動き出して活性化し、景気がよくなります。国に頼らない民間による景気対策があっていいと思いますし、資本家というのは古来、それを当たり前のようにやってきたわけです。そういう資本家的な投資をやろうと思っています。そういう時にこそ、社会に対する想いや美意識が求められます。それを常に意識しています。
 みんなが売っている時に、価値のあるものを買うのです。結果的に安く買えるわけですが、その後、いずれ評価が上がってきた時に少しずつ売っていきます。でもそれは何のために売るかというと、儲けるためだけではなく、次の不況時に、また、お金を放り込む必要があるからです。そういうことを繰り返しているうちに、結果的に安く買って高く売るということになり、投資リターンが積み上がっていくものなのです。

世の中に必要なもの
 必要なところに必要なお金をつぎ込む時の判断というのは、簡単です。それが世の中にとって必要なものであること、それだけです。人間が生きていくには、「お世話様」と「おかげ様」という気持ちがあればいい。その気持ちさえ持って生きていれば、いろいろなことが見えてくるものです。とても簡単でシンプルなことです。きちんと考える癖をつけておけば、どんな時にでも考えられるものなのです。
 たとえば、ビルにしても、コンクリートと鉄骨の塊ですが、これは私たちが生きていく上でとてもありがたいものです。でも、普通に考えたら、それは古い産業ということになってしまいます。本当は、そんなことはありません。いつの時代にも必要とされる大切な産業なのです。人が生活する上でいつでも必要なもの、つまりそれは衣食住です。すべてはそこへ帰結するのです。カメラだって今、資材が上がって原材料が足りなくなってきているから、これからもっと高くなりますよ。でも、想いを記録する装置として必要なものですから、資材価格が上がったら、この先どうなるのかということを勉強しなければならないし、考えなければなりません。
 うちはアナリストミーティングをオープンにしていますが、基本は、勉強心のある人たちが集まって勉強している会です。みんなで集まれば、いろいろな切り口や考え方を発見できます。新たな勉強のためのきっかけにもなります。一人で勉強していると、だんだん視野が狭くなりますが、いろいろな人がいれば、発見や気づきがあります。そこからどんどん広がっていくのです。誰でも自由参加できる、そういう場を提供できればいいと思って続けています。



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