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Vol.025 さわかみ投信株式会社 代表取締役 澤上篤人第2話 前を向く

大人が大人である社会
 頭でっかちに考えるのではなく、心で何がいいか、どう使えばいいのかを、それぞれが考え出せば、お金の使い方がワンパターンになることはありません。みながいろいろ考えて、自分で工夫していけば、そういうカッコいい大人たちが増えていくと思います。そうなれば、次のステップでは、子どもたちや、さらに次の世代が、身近なところにいるカッコいいおじさん、おばさんに憧れるよになります。子どもたちが大人に憧れを持って生きる社会というのは、絶えて久しいですが、我々の世代で、そういうものをわずかでも残していく責任があるのではないかと思っています。
 第1段階は、長期運用で財産を殖やして生活基盤を固めることです。第2段階はお金が増えたら、じゃんじゃん使って、しかもカッコいい使い方をするのです。そして、ふと気づいたときに、子供たちやその次の世代が、そういう大人たちに憧れを持って見ていたということになれば、子供たちはもっと輝くでしょう。それが第3段階です。もっともらしい言葉でいえば、大人が大人である社会の中で、その大人を憧れとして子どもたちが育っていく、ということです。それを言葉ではなくて、素直な気持ちでカッコいいと思ってもらえればいいのではないかと思います。
 もちろんカッコいい大人のモデルがいるわけではなくて、自分は自分です。必死にもがいて探し、どうしたらいいか、何をやろうかと考えて、面白くなってくれば、あれをやろう、これもやりたいというふうに自然に湧き出てくるものです。そうやって自分で面白がればいいのです。お金を懐に抱え込んで死んでもしょうがありません。どんどん使えばいいのです。それは、自分を表現することの面白さと同じです。でも、そういうことすらあまり意識しないほうがいいのかもしれません。言葉でいうよりも、まずはやってみることです。過去にこだわる必要はないし、ここから先、何ができるか、なのです。

give,give,give
 社是に“give,give,give”と書いてあるのは、私の考えであり、社員共通の想いとしようというものです。そういう仲間・同志が集まっているのが、我々の会社です。こういう業を続けていく者にとって必要なのは、 「想い」や「情熱」です。自分の金儲けのため、という人もいますが、そこにも「儲ける」という情熱があります。私の場合は、自分自身が世の中に対して何ができるのか、そういう情熱を大切にしたいと思っています。
 カッコいい大人を見て、子供が育っていくという話は、ある意味、教育の話でもあると思いますが、面と向かって説教をするような教育など、たいしたものではありません。教育とは、背中を見せることです。カッコよくお金を使って生きるということは、前向きに生きているということで、その背中を見せるということです。語るよりも行動なのです。子供は、大人が何をやっているのかを見ているものです。だから、「どうだ、カッコいいだろ」と見せつけることは、下の下です。さりげなく、そして、どんどん行動することが大事です。親自身がどんな夢、どのような価値観を持って生きているか。そして、そこに自分のお金をどんどん注ぎ込んで、生きているか。そういう生き様をさりげなく見せることは、かなりカッコいいことだと思いますよ。
 そうすると、そういう生き方に対して、子どもたちが自然と憧れる、そういう展開になるのです。新しい価値観が生まれて、活気が出て、それがまた次につながっていくのです。だから、顔を上げて、前を向き、模索しながらでも進んでいくべきです。そうして必死に、前を向いて生きていく、その清々しい姿を後ろから眺めることで、子供たちは「ああ、いいな」と思い、憧れるわけです。



(3月19日更新 第3話「ビレッジ」へつづく)




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