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Vol.025 さわかみ投信株式会社 代表取締役 澤上篤人第3話 ビレッジ

ファンドの先にある未来
 会社の収支が黒字に転化して、社会にお返しできるようになったら、いろいろなことをやっていこうと考えていました。そのときに使うお金は、もちろん会社が得た利益から出します。ファンドの純資産というものは、あくまでもお客様のものであって、わたしたちのものではないからです。
 では、なぜ社会にお返ししていくのか、それは、会社を常に余裕のある飢餓状態に置いておきたいからです。人間は、貧しい時に真剣になります。それは会社も同じです。楽になってくると、必ず贅肉が付きます。心や頭に贅肉がつき始めたら、どうにもなりません。だから、意識的に飢餓状態に置こうということなのです。会社が得た利益の余裕部分は、世の中のためになることにどんどん使います。自分たちのための利益は、少し控えめにして、でも世のため、社会のためなら、贅沢にお金を使おうという意識を、社員一人ひとりが持っています。みんな、いろいろな夢を持っていますよ。ある社員は農業に関心があって、化学薬品や化学肥料を使わない循環型の農業をやってみたいといっています。「美味しそうな土というものを感じられる」というのです。その土からできた野菜の味も想像できるし、微生物にも興味があって、できれば研究して、農業に活かしてみたいと。
 ここは、そういう夢が集まってくる場所なのです。常にそういう会社でいたいと思います。仕事ばかりでは、つまらないでしょう。そういう夢の向かう先が、社会のためになるということを意識できる人間が集まってくれば、楽しいじゃないですか。そういう集団にしたいのです。だから「組織」ではありません。仲間、同志が集まっているのです。今、約60名ですが、みんながいろいろ考えて、多様な夢を持っている、そういう場なのです。

ビレッジ構想
 3、4年後には、地方に移るつもりです。場所を選定して、本社屋を建設し、本社機能をすべて移します。豊かな自然の中で生活すれば心身にもいいし、発想力や想像力も豊かになります。農業をしたいという夢にも直結しますね。将来は、5万人、10万人規模のビレッジを作る構想です。大学の街みたいなもので、当然、教育の場も作っていきます。今の教育が抱える問題は国や社会の動きを待っていても埒が明かないから、問題意識を持った人が集まって本当にいいものを新たに作ってしまえばいいと考えています。問題があるなら、問題がないものをつくればいいのです。そのためにお金を使うのであれば、面白いじゃないですか。
 本社移転以外のこうした諸々の挑戦は第2フェーズです。もちろん投信会社として、本業の運用はものすごく純度の高いものにして、その持ち株会社がビレッジを運営すればいいと考えています。そして第3フェーズでは、ハッと気づいたら、子どもたちが憧れてくれたり、そのビレッジに世界中から子どもたちが集まってきたりしたらいいですね。高いレベルの教育、それは頭だけではなく、心でいろいろなものを感じ取れるような教育です。そういう子どもたちが集まってきてくれたら、最高です。
 それはいわば、実現性、持続性のあるユートピアです。ユートピアは、想いだけで進んでいくと経済的に立ち行かなくなるので、どこかおかしくなるわけです。我々は頑張って仕事をすればするほど、ファンド仲間に信頼されてファンドが大きくなっていけます。そして、いただく信託報酬が増えれば、社会のために使えるお金も増えていきます。お金を使えば使うほど、世の中が面白くなっていくのです。

(3月26日更新 第4話「循環」へつづく) 




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