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Front Interview
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Vol.025 さわかみ投信株式会社 代表取締役 澤上篤人第4話 循環

人として何ができるか
 ビレッジ以外に際だった夢があるとすると、一つは自然です。今、山や森が大変なことになっているでしょう。いずれ植林隊を組織して、放ったらかしになっている森を間伐し、太陽を注ぎ込むようにして、雑木林の再生にお役立ちできればと思っています。お金を使うにしても、リターンは一切考えません。やりたいからやるのです。経済行動からいちばん遠い行為かもしれません。でも、社会にとって必要なものですし、人にとっても大切なものです。豊かな森が残って子供や孫にまでずっと引き継がれていくことは、心底いいなと思います。はげ山や放ったらかしの森を子どもたちに見せたくないし、できるだけ、いい森に戻していくことが、人間として、大人としての責務だと思います。それは価値あることです。私自身も、そういう森があればいいなと思いますしね。
 また、親に捨てられたり、放ったらかしにされたりして、気の毒な環境に生まれた子どもたちがいます。自分には何の責任もないのに、生を受けた瞬間から重い荷物を背負って人生を歩き出さなければならない子どもたちです。それはすごく不条理なことです。そういうところからスタートしたことで、多くの場合が、不幸な道を歩んでいます。ならば、ビレッジですべて引き受ければいいと思うのです。ビレッジで最高の教育を受けて、ビレッジ出身ということで世の中に出ていけるようにしてあげたい。そんなふうに、何かおかしい、変だと感じたことがあれば、行動すればいいし、何ができるかを考えればいいのです。いくらでも発想は出てくるものです。
 当たり前のことですが、人間、やさしくなかったら、何の意味もない存在です。とことんやさしく生きていきたい、そう思っています。ただ、やさしさといっても、従属的なやさしさや何かに頼って成立するようなやさしさというのは、実はやさしさでも何でもないと思います。自立心を養えなければ、本当のやさしさにはなりません。経済的自立、人間的自立が大切なのです。その上で、本来のやさしさをもっと出していけばいいのではないかと思うのです。人間としてどうなのかという意識を常に持つこと、そして、人として何ができるか、そればかりを自分に問いかけています。

小欲知足
「小欲知足」という言葉が仏教の教えにあります。過分に食べたら、お腹がふくれてしょうがありません。少し欲を抑えて、ありがたいと満足して生きていれば、何にもいらなくなります。小欲知足を意識すればするほど、人生は面白くなり、楽になっていきます。普通に生きて人生を終える人は数多くいますが、それがいちばん素敵なことだと思います。
 たとえば、土と共に生きている農家の人など、本当に人間らしい暮らしをしているなと感じます。余計なことは何も語らず、ひたすら生きています。そして、その暮らしの中に人間としての想いもやさしさもちゃんとあるのです。そのやさしさが大切なのです。でも、それを説教としてとやかくいうのは嫌なのです。ごく自然に生きていく中で、同じ考えを持つ人と出会い、共鳴して仲間が増えていく、そういうことでいいと思っています。何かを伝えようとした瞬間に、言葉を労さなくてはならなくなるし、本当に伝わるかどうか自信もありません。私自身、もっともっとそういう感性を磨きたいのです。
 会社も、「おお! わぁ! すごい!」というような感嘆符が飛び交うような社風にしたいと思います。相手の生き方に感銘し、シンクロする。頭で考えていたら、いいか悪いかで判断しなければなりませんが、瞬間に感じ取ると、いいも悪いも直感的にわかります。考え、走り、どんどん進んで、先に走っている私は、後ろからくる人の踏み台みたいなものです。どうせなら大きな踏み台になってあげれば、みなドーンと大きく飛躍できるじゃないですか。それで次の世代が、また走り続けていくことができます。心豊かで頑丈な踏み台になってやろうと思います。


次号(2008年4月2日発行)は、法政大学名誉教授・法政大学学事顧問の清成忠男さんが登場します。




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