「小欲知足」という言葉が仏教の教えにあります。過分に食べたら、お腹がふくれてしょうがありません。少し欲を抑えて、ありがたいと満足して生きていれば、何にもいらなくなります。小欲知足を意識すればするほど、人生は面白くなり、楽になっていきます。普通に生きて人生を終える人は数多くいますが、それがいちばん素敵なことだと思います。
たとえば、土と共に生きている農家の人など、本当に人間らしい暮らしをしているなと感じます。余計なことは何も語らず、ひたすら生きています。そして、その暮らしの中に人間としての想いもやさしさもちゃんとあるのです。そのやさしさが大切なのです。でも、それを説教としてとやかくいうのは嫌なのです。ごく自然に生きていく中で、同じ考えを持つ人と出会い、共鳴して仲間が増えていく、そういうことでいいと思っています。何かを伝えようとした瞬間に、言葉を労さなくてはならなくなるし、本当に伝わるかどうか自信もありません。私自身、もっともっとそういう感性を磨きたいのです。
会社も、「おお! わぁ! すごい!」というような感嘆符が飛び交うような社風にしたいと思います。相手の生き方に感銘し、シンクロする。頭で考えていたら、いいか悪いかで判断しなければなりませんが、瞬間に感じ取ると、いいも悪いも直感的にわかります。考え、走り、どんどん進んで、先に走っている私は、後ろからくる人の踏み台みたいなものです。どうせなら大きな踏み台になってあげれば、みなドーンと大きく飛躍できるじゃないですか。それで次の世代が、また走り続けていくことができます。心豊かで頑丈な踏み台になってやろうと思います。
次号(2008年4月2日発行)は、法政大学名誉教授・法政大学学事顧問の清成忠男さんが登場します。
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