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Front Interview
第1話 第2話
第3話 第4話
Vol.027 株式会社ライトレール 代表取締役社長 阿部等第1話 精通
コラム(1) パーソナル・データ(1)
35年の蓄積
 今まで、数多くの成功された起業家の方のお話を伺いましたが、日本サン・マイクロシステムズと日本シスコシステムズの社長を務められた松本孝利氏のお話は、非常に的を射ていて印象的でした。それは「ベンチャー成功の要諦は何でしょうか」という質問に、「その業界のことに関して誰よりも精通することです」という非常にシンプルな回答でした。
 私は、交通に関して、人一倍、現場を見て、本を読み、データを追い、人の話を聞き、思索と議論を重ねてきました。さらに様々な実務経験を積んできた自信もあります。交通に関して誰よりも精通するための努力を、小学校中学年の頃から35年間くらい重ねてきたことになります。
 その結果として、交通に関して、私には手に取るように見えていることが、相手には見えないということが頻繁に起きます。たとえば私には、鉄道の利便が向上し、人々の生活がより豊かになり、交通による環境負荷も軽くなる社会が手に取るように見えます。

鉄道の本気
 拙著『満員電車がなくなる日』(角川SSC新書)を2008年2月に出版しました。出版社の紹介文は、「著者の提案する3つのイノベーションを実現すれば、満員電車はなくなり、日本のサラリーマンは本当の意味で豊かな生活を手に入れることができる。鉄道大国ニッポンが抱える最大の問題「満員電車」をあらゆる角度から検証し、旧態依然とした日本の鉄道業界に一石を投じる、渾身の一冊!」となっています。ネット上でもそこそこ話題になっています。また神奈川県立川崎図書館では出版記念講演会を開催していただきました。春からは日本大学で軌道工学という授業を受持ち、この本の内容を講義しています。朝日カルチャーセンターの夏期講座にも組込まれました。
 私は、この本が多くの人に読まれ、「満員電車はなくせる、なくそう」という機運が盛り上がれば、業界・行政・政治が動き、満員電車を本当になくせると心底思っています。国土交通省鉄道局の幹部やJR東日本の役員の方々にも読まれており、可能性の芽は充分にあります。多くのブログでも取り上げてもらっており、その中の1つで、「鉄道が本気出したらすごい、 という思いがびしびしと伝わってくる」と評されました。まさに、私の気持ちをズバリ言い当てられました。
 この本で私は、「満員電車」というキーワードで様々な提案をしましたが、本当に伝えたかったことは、鉄道は多大なる発展のポテンシャルを持っており、今後、鉄道屋が頑張ることにより、社会の発展や豊かさの実現に貢献できる、ということです。この本を読み、一人でも多くの人が鉄道や交通に対する関心を高め、また「その世界で活躍したい」という情熱を持ってくれることを願っています。

鉄道の可能性
 拙著『満員電車がなくなる日』では、鉄道が本気になれば何ができるかを徹底的に検証いたしました。1995年に起こった阪神・淡路大震災は、朝6時前だったため、電車はまだ数えるほどしか走っておらず、脱線事故はさほど目立ちませんでした。しかし、もし首都圏を、朝8時前後にあれだけの大地震が襲ったら、どんなことが起きるでしょうか?
 あらゆる路線で多くの電車が脱線し、線路から外れた電車は正面衝突し、あるいはホームに突っ込み、電車によっては高架橋から転落するでしょう。地下鉄では、停電により照明は消えて真っ暗闇となり、エスカレーターやエレベーターも停止してしまいます。鉄道関連での死者が数千人、数万人、いや数十万人に達するかもしれません。怪我人はその数十倍になるといわれています。
 想像するだけで恐ろしくなります。被害をゼロにはできないとしても、最小限に食い止める方策を提案し本の中に書きました。




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