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Front Interview
第1話 第2話
第3話 第4話
Vol.027 株式会社ライトレール 代表取締役社長 阿部等第4話 活路
コラム(4) パーソナル・データ(4)
ライトレール設立
 2005年3月末に、名古屋鉄道(名鉄)の岐阜市内路面電車、および接続する郊外鉄道が廃止されました。海外では路面電車を活かした街づくりが盛んに進んでいる中、人口40万人の県庁所在都市の都心部に乗入れている路面電車の廃止は異例と言えます。利用人員や売上げ、費用構造などを調べると、やり様によっては経営が成立つように見えました。存続を希望する人は多数いて10万人以上の署名も集まりましたが、自ら事業を手掛けようという人はいませんでした。
 私自身も、会社の仕事とは別に夜中と週末の限られた時間で、再生計画を作成して関係者の合意をまとめることは不可能でした。はたから見ると無謀に見えたでしょうが、岐阜路面電車を再生させる取組みに集中できるよう2005年4月末をもってJR東日本を退職しました。私の力不足により存続は叶いませんでしたが、良い経験になりました。
 全国で地方鉄道の廃止が進む中、それを再生させたいと願う声は多数あります。LRT構想も堺・宇都宮・池袋をはじめ多数ありますが、その実現に熱心な鉄道会社はなく、自治体の検討では実現困難というものばかりです。地方鉄道の再生やLRTの実現をお手伝いできるよう、2005年12月に株式会社ライトレールを設立しました。

交通の専門能力を生かす
 お会いした方々に理念や思いをお話しすると、「ぜひ頑張って欲しいですが、どうやって儲けを出すのですか」と、必ず聞かれます。
 国交省の各部局は、地方の鉄道やバスの廃止が進む現実に対し、公共交通を活性化したいと強く考えています。また、経産省は省エネや中心市街地活性化の面で、環境省は環境負荷軽減の面で、同じく公共交通の活性化を望んでいます。それに伴いここ数年、国交省は全国の自治体に「地域のあるべき公共交通計画を作りなさい」と指示しています。しかし、自治体には道路づくり以外の交通計画の業務経験を持った人材も組織もありません。たとえば、独自にコミュニティバスを走らせ、移動ニーズとマッチせず空気を運んでいる例が全国に続出しています。そこで、国交省は「交通の専門能力を生かす力が欠かせない」と判断し、交通計画の調査をするために自治体へ助成する制度を年々充実させています。
 自治体はその資金により交通コンサルタント会社を利用できるようになりました。他の官庁も、公共交通の活性化を核とした地域活性化や低炭素社会実現への取り組みを支援する制度を充実させています。ということは、当社がソリューションを提案し合意形成できる体制さえ作れれば、仕事は次から次にあるわけです。現在、何件かの受注の目途が立っており、しっかりした成果を出し、他の地域からも受注を得られるようにし、また地元関係者の信頼を得て将来は交通事業を担う立場にまでなりたいと考えています。

交通に関する第一級の人材の集結
 当社の取組みをお話すると、社会性が高くソーシャルベンチャーと称される場合があります。ソーシャルベンチャーという言葉の響きからは、利益が少なく「清く正しく美しく」というイメージを持たれます。しかし、そうしたイメージでは力のある人材を集めることはできません。社会に役立つ成果を出してこそ会社の売上げも上がり、そこで働く人も豊かな生活ができるようになります。それを目指してこそ優秀な人材を集めて会社を成長させ、社会への貢献度を高められると思っています。
 松下幸之助さんは「儲けが出るのは社会へのお役立ちの証し。そして、さらに社会へ役立つ仕事をしろというお告げ」と言われました。出すべき儲けは出させていただき、それを原資に人材を集め、社会に役立つ会社に成長していきます。
 言うまでもなく、「企業は人なり。事業は人なり」です。当社の将来の目標は、交通に関する第一級の人材が集結する場になり、交通問題の解決を通して社会に貢献することです。好きなことさえできれば清貧生活で構わないなどとは一切思っていません。



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