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Front Interview
第1話 第2話
第3話 第4話
Vol.027 株式会社ライトレール 代表取締役社長 阿部等第2話 熱意
コラム(2) パーソナル・データ(2)
東京大学都市工学科
 東京大学では、2年生の後半に志望と成績により学科が振り分けられます。交通を学ぶには、都市・土木・電気・機械と様々な進路があります。曽根先生の電気工学科へ進学するには、数学・物理が不勉強のため、進学できる自信がありませんでした。そこで交通も含めて広く都市計画を学べる都市工学科へ進学しました。
 卒業論文は「鉄道の運賃とサービス水準に関する研究」。東急電鉄東横線をモデルに、電車を増発したダイヤを組んだ際のコスト計算をしました。東急電鉄からを収集した電気代や運転士・車掌の人件費といった基礎データを、昼間の設備改修と車両増備をしないものとして、増コストを利用人数で割り算すると、1人当り数円のコストで大増発できることが分かりました。そのとき、利用者が数円ずつ出せば目に見えて便利になるのに、鉄道会社が実行しないことに疑問を感じました。
 そして、修士論文は「鉄道における高負担・良質サービスの提供可能性に関する研究」。今度は東武鉄道の協力を得て、東上線の利用者を対象に、池袋駅で着席や輸送速度に対して乗客が支払うに値すると考える料金について面接調査しました。ある年配のご婦人から「2,000〜3,000円で座れるならタクシーより安いもの。すぐ実行してちょうだい」と言われました。また「着席と立ち席が同額とはナンセンス。値段差があって当然」との意見もありました。その結果、着席と立ち席の商品価値の差、時間短縮の価値とも1分10円はあると分かりました。鉄道は公共性が高く、一般商品とは異なるという感覚を持っている方が多いようですが、鉄道だけ特別視せず、在野のビジネスと同様の発想と展開は可能だと実感しました。  

鉄道の将来性を確信
 私が都市交通計画(新谷・太田)研究室にいた大学4年生から博士課程1年生までの4年間は、国鉄の分割民営化が決し実際に実施された真っ只中でした。そのために多くの交通や都市の現場も見て回りました。目前のことに追われない外の立場からその様子をつぶさに観察できました。
 そして、小学校中学年の頃から次第に身に付けた鉄道の知識、さんざん乗り回した自動車、卒論と修論での研究、国鉄の分割民営化、多くの現場、すべての見聞と思索を組合せて、私は鉄道の将来性を確信しました。自動車は、利便性・安全性・環境負荷・土地利用効率など、様々な点で理想的な交通システムではなく、21世紀の交通システムの主役たり得ないことを確認しました。
 一方、鉄道は、東海道新幹線開業から数年後の頃から20年間、本来の能力を発揮できずにいたのです。それが国鉄の分割民営化により「鉄道復権」という論調も広まり、一気に時代の流れが変わると夢見ました。しかし、現実は異なりました。

(5月21日更新 第3話「社会を変える」へつづく)  




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