東京大学では、2年生の後半に志望と成績により学科が振り分けられます。交通を学ぶには、都市・土木・電気・機械と様々な進路があります。曽根先生の電気工学科へ進学するには、数学・物理が不勉強のため、進学できる自信がありませんでした。そこで交通も含めて広く都市計画を学べる都市工学科へ進学しました。
卒業論文は「鉄道の運賃とサービス水準に関する研究」。東急電鉄東横線をモデルに、電車を増発したダイヤを組んだ際のコスト計算をしました。東急電鉄からを収集した電気代や運転士・車掌の人件費といった基礎データを、昼間の設備改修と車両増備をしないものとして、増コストを利用人数で割り算すると、1人当り数円のコストで大増発できることが分かりました。そのとき、利用者が数円ずつ出せば目に見えて便利になるのに、鉄道会社が実行しないことに疑問を感じました。
そして、修士論文は「鉄道における高負担・良質サービスの提供可能性に関する研究」。今度は東武鉄道の協力を得て、東上線の利用者を対象に、池袋駅で着席や輸送速度に対して乗客が支払うに値すると考える料金について面接調査しました。ある年配のご婦人から「2,000〜3,000円で座れるならタクシーより安いもの。すぐ実行してちょうだい」と言われました。また「着席と立ち席が同額とはナンセンス。値段差があって当然」との意見もありました。その結果、着席と立ち席の商品価値の差、時間短縮の価値とも1分10円はあると分かりました。鉄道は公共性が高く、一般商品とは異なるという感覚を持っている方が多いようですが、鉄道だけ特別視せず、在野のビジネスと同様の発想と展開は可能だと実感しました。
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