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Front Interview
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第3話 第4話
Vol.027 株式会社ライトレール 代表取締役社長 阿部等第4話 活路
コラム(4) パーソナル・データ(4)
鉄道の有効活用
 全国には活用が望まれる鉄道インフラが多数あります。最たるものは、大都市の鉄道です。山手線は朝ラッシュ時に2分30秒間隔、1時間に24本の運行で、マスコミでは「過密運転」とも言われています。しかし、自動車と比べると圧倒的な「過疎」運転です。私は『満員電車がなくなる日』に、信号システムの機能向上と鉄輪式リニアによる加減速性能の向上により、1時間に50〜60本を運行できると書きました。総2階建て車両化と合せて、首都圏各線ともラッシュ時の輸送力を現行の3〜5倍にでき、文字通り満員電車はなくせます。
 地方鉄道でも同様です。JR・民間・三セクとも、地方路線の普通列車は収益性がないと判断されていて、50年くらい前と比較してもSLの煤煙がなくなったことと冷房が付いたくらいで、本質的利便性は向上していません。一方、自動車交通の利便性は、道路整備・自動車の性能向上と価格低下・免許保有率の向上により画期的に向上しました。ところが近年、自動車交通の進歩は頭打ちです。それに対して、鉄道には、イノベーションにより低コストで大幅に利便向上できるポテンシャルを持っています。
 貨物専用線についても同様です。大都市圏内に旅客列車が走行していない路線がいくつかあります。いずれも繰返し旅客化が検討され、コストの割に収益を見込めずとの判断で頓挫しています。利便性の高いサービスを提供すれば思いのほか利用されることは、武蔵野線・湘南新宿ライナーなどで証明済みです。旅客化と沿線開発の連動で利用をさらに促進させ、非常に低コストで良質な居住エリアを生み出せます。

交通問題解決を目指して
 こうした話をすると、政治家・官僚・大学教授・評論家の道を勧められることが多くあるのですが、私自身は企業家という選択肢が最適だと思っています。企業家は、社会のニーズと最先端の技術に精通し、皆がハッピーになれるソリューションを提案したうえで、さらに実行できるのです。他の立場では、他人が実行する環境の整備やソリューションの提案しかできません。
 現代社会でベンチャーというと、IT・バイオ・新素材が大半で、交通を商材とする会社は稀です。しかし、現在ある鉄道ネットワークの大半はベンチャー企業がつくりあげてきたものです。社会が交通問題の解決や既存鉄道の有効活用を望んでいるという追い風の中、既存の交通事業者が本業の展開に積極的でないのは、新参者にとって大きなビジネスチャンスです。
 JR東日本を飛び出してから3年間が経過しました。商材の性格上、相応の売上げが上がるまでの仕込み期間を要し、支出先行すなわち赤字経営が続いていますが、ビジネスの種まきを重ね、大きく飛躍できる活路は充分にあると実感しています。交通問題解決をミッションにチャレンジを重ねていきます。



次号(2008年6月4日発行)は、 ウォーターグループ代表の 坂井直樹さんが登場します。




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