日産Be−1のデザイン開発に関わって、いろんなことを学びましたが、ただ、その時も今も変わらない僕自身の考えは、洋服も自動車も時計もデザインという視点から見れば同じだということです。それは、カーデザインという領域に足を踏み入れたことでわかった回答で、たとえば僕がずっとファンション関係のデザインだけやってボーダーを越えていなければわからなかったことです。
なぜそのように感じたのかというと、20世紀では、あらゆるもののデザインがパッケージデザインだったのです。フェラーリだって、シャーシがあってエンジンが付いてマフラーのレイアウトは、すでにエンジニアによって決められているというように、カーデザイナーが考える範囲はある程度限られてきます。全部組み上げたマシーンに対して、パッケージングするようにデザインを描いていく作業はファッションも自動車も同じことをしているのです。
一方、21世紀になるとデザインはユーザーインターフェイスとしての役割を果たすため、パッケージもコンピュータというハードウエアやOSというテクノロジーと結合されている点が特徴です。1970年代以降、機械はどんどん電子化されました。電話の回転式ダイヤルは人間が指で回す時間の長さで1とか2を計測したものだったのが、今は数字キーをプッシュするだけで1も9も同じスピードです。要するに車はマシーン・エイジ、携帯電話はエレクトロニクス・エイジのデザインなのです。自動車も最終的にホイルインモーターといって車輪の中にモーターが入って、あとはコンピュータ制御になり、ブレーキもガソリンもいらなくなります。それらの新しい技術が新しいデザインを生み出します。将来的には世の中からすべての機械が消えているかもしれません。
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