現在は、3社の取締役と1社の監査役をしています。4月9日にヘラクレスに上場したアールテック・ウエノは、ファウンダーが立派なサイエンティストで、かつ事業センスもある方です。自分で薬を創って、会社を店頭公開させるという日本人としては稀なケースですね。アメリカでも創薬に成功しNASDAQで上場しました。日本のほうは最初の開発品である緑内障治療薬の収入をベースにドライアイなどの眼科疾患向け新薬や育毛剤の研究開発・製造を行っています。一方、セルフリーサイエンスは、愛媛大学の遠藤彌重太教授の蛋白合成技術を事業化しようという目的で作られた会社で、6〜7年苦労し続けていますが、グローバルに顧客ベースが拡大して少しずついい方向に向いてきています。
今はある意味、投資していないキャピタリストみたいなものですね。バイオに特別な知見があるわけではありませんが、自分としてはテクノロジーベンチャーに対するサポートができれば素晴らしいと思っています。そういうところは、祖父と父のDNAなのかもしれません。テクノロジーベンチャー自体が今の日本にいちばん欠けている分野ですが、仮に日本に独創的なテクノロジーがあったとしても、それを支える仕組みがないことだけは確かですからね。
発想のユニークさという点でいうと、日本にはグーグルのようなものは生まれないのかもしれません。遠藤教授の技術でも、徹底的に小麦胚芽をきれいに洗いぬいていくところに新しい展開があって、その技術を掘り下げていくものですし、上野博士はプロスタグランジン(生理活性物質の一種)の体内における代謝物に薬理効果があるのではないかと、20数年間も研究を続けて成功したものです。そういう“一所懸命”なものの上に、何かがあるという気がしているのです。
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