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Vol.032 株式会社船井本社 代表取締役会長 船井幸雄第1話 有意

一人一人が率先して正しい行為をする
 みなさんは「百匹目の猿現象」をご存知でしょうか。昭和23年頃、宮崎県串間市の幸島に生息していた猿を対象に、京都大学の研究者が生態研究を始め、その一環としてサツマイモの餌付けを試みたことがあります。しばらくして面白い現象が起こりました。一匹の若いメス猿が川の水でイモを洗って食べ始めたのです。こうするとイモについた泥が取れて、食べやすくなり、塩味も付くのです。それを見ていた仲間の猿が次々に真似をして、イモを洗ってから食べるようになり、「味付け」行動も日常的に見られるようになりました。ところが、さらに時間が経過すると、今度は遠く離れた大分県の高崎山の猿たちが同じようにイモを洗って食べ始めたのです。
 この現象は、「誰かがどこかで良い行為をして、それと同じ行為をする人数がある一定数を超えると、時空を飛び越えて他の場所にいる同類に伝播する」というもので、動物学者のライアル・ワトソン氏が「百匹目の猿現象」と命名したのです。そしてイギリスの有名な生化学者ルパート・シェルドレイク博士がこれを裏付けました。私はこの現象を知ってから、世界が理想の世の中に好転する希望を持つことができるようになりました。
 私は、この理論が人間にも当てはまるのではないかと考えています。誰かが正しい行為をすれば身近な同胞に波及し、その結果として社会全体にその行為が伝わります。そのためには一人一人が率先して、正しい行為をすることです。そうした日本人の仲間を5,000人一カ所に集めることが私の最初の使命と悟り、オープンワールドという催しを1994年から10数回も行ってきました。

経営コンサルタントとは違う使命
 昨年3月から体調を崩し、1年間で12〜13キロやせました。今年6月には死を覚悟するまで悪化しました。今までに病気らしい病気をしたこともなく、自分ほど幸せな人間はいないと思っていたのに、私も普通の人間だと思いました。最初にノドの異常から始まり、次に心臓が悪いといわれ、そのうちに全身に湿疹が出ました。今年に入ると、今度は左眼の充血がひどくなって、ついで、左耳の急性中耳炎になり、それが右耳にも移り、ある日からまったく音が聴こえなくなりました。音のない状態は不思議な感覚でしたが、代わりに川の音のような耳鳴りが激しくするようになったのです。原因は急性の中耳炎と蓄膿症と診断されました。
 6月中が一番症状の重い時期で、毎日毎日が死ぬか生きるかでした。8月までは生きられないだろうと思って遺書も書きました。どうせ死ぬのだったら、青酸カリでも入手しておけばよかったと思うほど体調は最悪の状態でした。死を実感して初めて、「今までどこに行っても大事に迎えられ、高額の経営コンサルタント料や講演料をいただき、それでまたコンサルティングや講演に出かける」というようなバカなまねはやめろということらしい……と気づきました。もっと他にやるべきことがある、経営コンサルタントとは違う使命が自分にはあるのだということを知らされたのです。
 病気のほうは6月20日に中耳炎の手術をした後、30日に蓄膿症の手術をしました。レントゲン写真を見ると両方の頬の辺りは膿だらけ。メスを入れる場所が5ミリずれたら失明する可能性があるとのことでした。私は手術する道を選びました。手術は無事成功し、洗面器の3分の1ほどの膿が出ました。耳鳴りも治り、「1回の手術でこれほどよくなるとは奇跡に近い。1カ月を要するところを10日間で治った」と、その回復ぶりに医師が驚くほどでした。




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